恋のおはなし

すこしだけ恋のおはなし。






ある女の子のはなし。


そのこには今、彼氏がいる。


はじめてあったときから、なんだか気になっていて、
言ってみれば、一目ぼれだったみたい。
会社の先輩。
4月に入社して、
その人とはじめて2人でご飯を食べたのが7月。
仕事の話をして、相談したり。
ただそれだけの関係。だけど、よく一緒に夜ご飯を食べた。
遊びにいこうと誘ってみたり。うまくかわされながら。


12月に、転勤がきまる。
11月の半ば告白。 かわされる。
12月の半ばにもう一回。 ことわれる。
そして1月10日。
付き合うことになる。
転勤して、すぐ。電話で


「いい忘れてたけど、付き合ってみようか」




頑張って頑張って、
それが伝わったのか、向こうの根負けなのか、
わからないけれど、今彼女は幸せだ。




だけど、胸が痛い。
すごく痛い。
たまに、すごく大きな波が表れて、
彼女を襲う。
だめだとわかっているのに、あの人に電話をかけてしまう。
だめだとわかっているのに、あの人にあってしまう。


そのこには彼氏がいる。
大好きな彼氏。大切な人。
それとは別に、
そのこにはすごく好きな人がいる。
大切な人がいる。
たぶん、一生、忘れないだろう人がいる。
一緒にいたい人。一緒にいれない人。


「でもそれは叶わない」


頑張ればどうなるかわからない。
あきらめちゃいけない。


そんな言葉は陳腐だ。
そういうのではなくて、
何があっても、
どんなにつらくても、
好きでも


「あきらめなくちゃいけない」


そんな人がいる。
一緒にいたくていたくて仕方ないのに、
一緒にいるのがつらすぎて、離れた人がいる。


きっと今、その人に
「何もかも捨てるから、一緒にいこう」
といわれたら、
今の人を捨てていってしまうかもしれない。
いや、きっと行ってしまう。どこまでもどこまでも。


離れたからわかる。
忘れることなんて出来ない。
やっぱり大切な人なんだと。


彼女は言う。
今の彼のことは大好きだし、とても大切な人。
それは変わらない。
うしろに影は見えるけど、きっと一生消えないけど、
それを背負って愛していかなくちゃいけない。
だめだとはわかっていても消えない思いを自分の中だけに抱えて。


苦しくて深くて、
きっと彼女にしかわからないと、彼女は言う。
きっと本当にそうなんだろうと思う。